生成AIで仕事は速くなる。でも「自分で考える力」は育っている?
生成AIの普及によって、資料作成や情報収集、文章の作成など、これまで時間をかけていた仕事が短時間でできるようになりました。一方、人材育成の現場では、新たな課題も生まれています。
それは、「AIを使って仕事ができること」と「自分で考えて仕事ができること」は、必ずしも同じではないという点です。
人事担当者の76.2%が懸念すること
2026年10月7日、産業能率大学とHR総研が「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」を公表しました。
国内企業320社の回答を主集計したこの調査では、生成AIの普及を踏まえた新人・若手社員の職場での育成について、76.2%が「本人がどこまで自分で考えたのかを確認しにくい」ことを懸念していました。
また、生成AIの普及が人材育成に影響すると考える回答は79.1%に達した一方、人材育成の見直し・対応を実際に行っている企業は、調査した5つのテーマのいずれも2割未満でした。
生成AIによって仕事の進め方が変わるなか、人材育成のあり方を見直す必要性が認識されていることがうかがえます。
AIが出した答えを、自分の答えにできるか
ここからは、人材育成の観点から考えてみたいと思います。
例えば、若手社員が生成AIを使って企画書を作成したとします。
完成した資料が分かりやすく、内容も整っていれば、上司は「よくできているね」と評価するかもしれません。
しかし、その社員は、なぜその提案が必要なのか、ほかにどのような選択肢があるのか、十分に理解しているでしょうか。
生成AIの活用そのものが問題なのではありません。
大切なのは、AIが提示した情報を自分で検討し、判断する過程を失わないことです。
上司が確認したいのは「答え」だけではない
これからの育成では、完成した成果物だけでなく、そこに至る思考の過程にも目を向ける必要があります。
例えば、次のような問いかけが考えられます。
- 「今回の提案で、一番大切だと考えたことは何?」
- 「ほかの選択肢ではなく、この方法を選んだ理由は?」
- 「AIの回答で、自分なりに修正したところは?」
- 「もし条件が変わったら、どう判断する?」
こうした問いかけは、単に正解を確認するためではありません。
本人が何を理解し、どのような根拠で判断したのかを把握するためのものです。
これからの人材育成に求められること
生成AIの活用が広がるほど、上司には、部下の成果物だけでなく、その背景にある考え方を引き出す関わり方が求められるのではないでしょうか。
もちろん、すべての仕事で一から考えさせる必要はありません。
効率化できる部分はAIに任せながら、人が考えるべきこと、判断すべきことを明確にすることが重要です。
「答えを出せる人」を育てるだけでなく、「なぜその答えなのかを説明できる人」を育てる。
生成AIの普及は、これまでの育成方法を見直す一つの機会といえそうです。
出典: 学校法人産業能率大学・HR総研(ProFuture株式会社)「生成AIと人材育成に関する人事実態調査」(2026年10月7日公表)
https://www.hj.sanno.ac.jp/research-report/202610/generative-ai-hr-survey2026.html





