「不機嫌」も職場のリスクに? 注目される「フキハラ」をどう考える
「挨拶をしても返事をしない」
「質問すると、大きなため息をつく」
「機嫌が悪い日は、話しかけても無視する」
「気に入らないことがあると、物を乱暴に扱う」
暴言を吐くわけでも、怒鳴るわけでもない。しかし、こうした態度が繰り返されることで、周囲が「今日は機嫌が悪そうだから話しかけないでおこう」「怒らせないようにしよう」と気を遣うようになることがあります。
いま注目されているのが、こうした「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」です。
働く人の74.6%が「職場にフキハラをする人がいる」
株式会社エムフロが2026年5月、仕事をしている男女500人を対象に実施した調査では、74.6%が「職場にフキハラをする人がいる」と回答しました。
また、フキハラによる職場への悪影響として、
・雰囲気が悪くなる 28.4%
・コミュニケーションが減る 20.6%
・仕事の効率が下がる 17.0%
などが挙げられています。
「一人の機嫌の問題」と思われがちですが、周囲がその人の機嫌を読みながら仕事をする状態になれば、必要な報告や相談が遅れたり、コミュニケーションそのものを避けたりすることにもつながります。
つまり、問題は「感じが悪い人がいる」ことだけではありません。
不機嫌な態度によって、周囲の行動まで変わってしまうことに注意が必要です。
出典:株式会社エムフロ「フキハラが及ぼす悪影響ランキング 男女500人アンケート調査」(2026年6月23日)
「不機嫌=ハラスメント」ではない
ここで注意したいのは、機嫌が悪いこと自体を、すぐにハラスメントと決めつけないことです。
誰にでも、体調が悪い日や仕事がうまくいかず気持ちが沈む日はあります。
また、「フキハラ」は、現在の法律上、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントのように独立したハラスメント類型として定義されているわけではありません。
だからこそ企業が見るべきなのは、「不機嫌かどうか」だけではなく、具体的にどのような言動があり、それが職場にどのような影響を与えているのかです。
たとえば、
・特定の人の挨拶や質問だけを繰り返し無視する
・ため息や舌打ち、威圧的な態度を繰り返す
・不機嫌になることで周囲に自分の要求を通させる
・必要な業務上のコミュニケーションに支障が出ている
・周囲が萎縮し、報告・相談ができなくなっている
といった状態が続いているのであれば、「本人の性格だから」で済ませず、職場環境の問題として事実を確認する必要があります。
暴言がなくても、心理的負荷になることがある
2026年4月には、T社から子会社に出向していた男性社員がうつ病を発症し自死した事案をめぐり、東京地方裁判所が労災を認める判決を出しました。
報道によると、長時間労働が認められない中でも、指導体制の不備や、上司による不適切な言動・態度の積み重ねなどによる心理的負荷が「強」と評価されています。
この事例からも分かるのは、職場で問題になるのは、必ずしも「怒鳴った」「暴言を吐いた」といった分かりやすい行為だけではないということです。
「あの人はそういう人だから」で終わらせない
フキハラへの対応で難しいのは、ひとつひとつの行為だけを見ると、小さな問題に見えやすいことです。
「ため息くらいで」
「返事をしなかっただけ」
「機嫌が悪かっただけ」
そう考えてしまうと、職場は介入しにくくなります。
しかし重要なのは、一つの言動だけで判断するのではなく、継続性・対象・業務への影響を見ることです。
特定の人への無視が繰り返されていないか。
必要な報告や相談ができなくなっていないか。
周囲が過剰に顔色をうかがっていないか。
チームの情報共有や連携に支障が出ていないか。
こうした変化が見られる場合には、本人の「機嫌」の問題として放置せず、管理職や人事が状況を確認することが必要です。
職場で見るべきなのは「感情」ではなく「行動と影響」
ハラスメント対策というと、「これはハラスメントか、ハラスメントではないか」という判定に目が向きがちです。
しかし、フキハラのようなグレーゾーンの問題ほど、名称や判定だけにとらわれないことが重要です。
本人が不機嫌であることを問題にするのではなく、その感情がどのような行動として表れ、周囲や業務にどのような影響を与えているのかを見る。
そして、小さな違和感の段階で対話や注意、職場環境の改善につなげていく。
「あの人は昔からああいう人だから」と周囲が我慢する職場にしないことが、ハラスメントを深刻化させないための一つのポイントです。
ハラスメントの知識だけではなく、判断に迷いやすいグレーゾーンの事例や、管理職が現場でどのように対応するかを取り入れた研修が効果的です。




