採用する側とされる側。その力関係が生むハラスメント
2026年10月25日、弁護士ドットコムニュースは、就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の問題を取り上げました。
記事では、就職面接の前後に身体を触られ、ホテルに誘われたという相談事例が紹介されています。
また、北海道では、インターンシップに参加した女子学生に対し、男性職員がLINEで食事や交際を求める連絡を繰り返したと報じられています。
こうした問題の背景には、
採用する側と採用される側の力関係の違いがあります。
就職を希望する学生にとって、企業の採用担当者や社員は、自分の将来に影響を与える可能性のある存在です。
不適切な言動に違和感を覚えても、
「断ったら選考に影響するのではないか」「企業との関係を悪くしたくない」と考え、拒否や相談をためらうことがあります。
2026年10月から、企業の防止措置が義務化
2026年10月1日、改正男女雇用機会均等法が施行され、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置が、すべての事業主に義務付けられました。
これまで、求職者等へのセクハラ防止対策は、企業にとって望ましい取り組みとして位置付けられていました。
今回の法改正によって、企業には、
採用活動に関わる学生や求職者等を対象とした防止体制の整備が求められることになりました。
採用面接は気を付けている企業も多いと思いますが、その他はいかがでしょうか。
●インターンシップ
●企業説明会
●OB・OG訪問
●教育実習・看護実習など
●SNSやオンラインを通じた求職活動等
企業の採用担当者だけでなく、
学生と接する機会のある社員にも、適切な言動が求められます。
過去には、大手電機メーカーの社員がインターンシップに参加していた学生に対する性的暴行の疑いで逮捕されるというショッキングな事件もありました。
企業が見直したい3つのポイント
① 採用担当者以外の社員にもルールを周知する
就活セクハラは、人事担当者だけが注意すれば防げるものではありません。
OB・OG訪問やインターンシップなどでは、現場社員が学生と直接接する機会があります。
採用活動に関わる社員に対し、禁止される言動や適切な距離感を具体的に伝えることが重要です。
② 学生との連絡・面談のルールを整備する
採用活動では、社員と学生が個別に連絡を取る場面もあります。
例えば、企業として次のようなルールを検討できます。
- 学生との連絡は会社が指定する手段を使用する
- 私的な食事や交際目的の誘いを禁止する
- 面談の場所・時間・実施方法について基準を設ける
- 採用活動に関する連絡や面談の状況を組織として把握する
担当者個人の判断だけに任せず、会社として管理できる仕組みを整えることが予防につながります。
③ 学生が安心して相談できる窓口を設ける
相談窓口が存在していても、学生が「相談すると採用に不利になるのではないか」と感じれば、利用をためらう可能性があります。
そのため、窓口の設置だけでなく、
相談者のプライバシー保護や不利益な取り扱いをしない方針を明確に伝えることが大切です。
また、大学のキャリアセンターなどを通じて相談が寄せられた場合の対応手順も、あらかじめ検討しておくとよいでしょう。
ハラスメントを防ぐために必要なのは、個人の意識と組織の仕組み
就活セクハラ対策を、採用担当者への注意喚起だけで終わらせてはいないでしょうか。
本人に悪意がなくても、採用する側の立場や影響力への認識が不足していれば、不適切な言動につながる可能性があります。
一方、個人の意識だけに頼る対策にも限界があります。
社員が適切に行動できるよう、企業として判断基準や行動ルールを明確にし、相談・対応体制を整えることが必要です。
採用活動は、企業が学生を評価する場であると同時に、学生が企業を知る場でもあります。
今回の義務化を機に、採用活動に関わる社員の言動だけでなく、組織としての管理体制を見直してみてはいかがでしょうか。
参考・出典