「困ったことがあったら、何でも相談してね」
部下を気遣い、そう声をかけている管理職は多いのではないでしょうか。それなのに、部下からはなかなか相談が来ない。問題が大きくなってから初めて報告を受け、「どうしてもっと早く相談してくれなかったの?」と戸惑うこともあります。
一方、部下からすれば、「こんなことを聞いたら、仕事ができないと思われるかもしれない」「忙しそうだから、今はやめておこう」「前に相談したとき、あまり良い反応をされなかった」といった事情があるのかもしれません。
上司は相談を歓迎しているつもりでも、部下が安心して相談できるとは限りません。
相談しやすい職場をつくるために必要なのは、「何でも相談して」という言葉だけではなく、相談したときにどのように受け止めてもらえるかという日頃の経験です。
職場で本音を話せる相手がいない人は50.8%
パーソル総合研究所が2024年3月に公表した「職場での対話に関する定量調査」(全国の正規雇用就業者6,000人)によると、職場で本音を話せる相手が「1人もいない」と回答した人は50.8%。また、上司との面談で本音を話せている割合が「2割未満」という人も51.2%に上りました。
さらに、本音で話しにくい相手の特徴として、最も高かったのが「自分への無関心」。次いで「意図しない相手に話が伝わってしまいそうだ」という不安でした。
私にも経験があるなぁ…と思いました。
部下は、上司の「言葉」より「反応」を見ている
例えば、部下が「実は、今の仕事の進め方で少し困っていて……」と話しかけたとします。
そのとき上司が、「それくらい自分で考えてよ」「前にも説明したよね」と返したら、上司に悪気はなくても、部下は「こんなことを相談すると迷惑なのかもしれない」と受け止めるかもしれません。
新人だったころの私はそんなタイプでした。
一方、「そうなんだね。どのあたりで困っているの?」と関心を示してもらえれば、もう少し話してみようと思えるかもしれません。
ここで大切なのは、相談されたときに必ず解決策を示すことではなく、まず相談そのものを受け止めることです。
パーソル総合研究所の同調査では、本音を話せる相手の特徴として、「最後まで話を聞いてくれる」「親身になって話を聴いてくれる」といった傾聴的な態度が上位に挙がっています。
「相談する力」だけでなく「相談を受ける力」も必要
相談できない部下に対して、「もっと主体的に動いてほしい」「報告・連絡・相談を徹底してほしい」と考えることもあるでしょう。
部下自身が適切なタイミングで相談する力を身につけることは大切ですが、相談のしやすさを部下個人の性格や積極性だけの問題として捉えるのは十分ではありません。
例えば、上司が次のような関わり方を意識することも有効です。
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小さな相談を歓迎する。 問題が大きくなる前に相談してくれたことを肯定的に受け止める。
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すぐに否定や評価をしない。 まず状況を確認し、必要な助言や指導につなげる。
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相談の機会を具体的につくる。 「いつでも相談して」だけでなく、定期的に進捗や困りごとを確認する。
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相談内容の扱いに配慮する。 誰にどこまで共有する必要があるのかを説明し、不用意に広めない。
また、相談する側にも、状況を整理して伝える力や、問題を抱え込まず早めに助けを求める力が求められます。
相談しやすい職場は、上司だけ、部下だけの努力でつくるものではないのです。
「何でも相談して」から、一歩進んだコミュニケーションへ
「何でも相談して」という言葉そのものが悪いわけではありませんが、その言葉だけで相談しやすい関係ができるわけではありません。
例えば、普段の会話の中で「今、進めにくいと感じている仕事はある?」「何か気になっていることはある?」と尋ねてみる。
相談を受けたときには「早めに話してくれてありがとう」と伝える。
こうした日常の積み重ねが、部下にとって「この人には話しても大丈夫」という判断材料になっていくのではないでしょうか。
相談しやすい職場づくりは、単なるコミュニケーションの改善ではなく、業務上の問題を早期に把握し、必要な支援や改善につなげるためにも重要です。
「相談してこない部下」を変えようとする前に、「相談しやすい職場になっているか」を見直してみる。 そこから、職場のコミュニケーションは変わり始めるのかもしれません。
弊社では、管理職の傾聴力・対話力の向上、部下の主体性を育むコミュニケーション研修、組織診断を通じた職場改善を支援しています。
相談しにくい、問題が上司に伝わらない、1on1が形骸化しているといった課題についても、企業の状況に応じた研修・コンサルティングをご提案しています。
参考資料
パーソル総合研究所「職場での対話に関する定量調査」(2024年3月29日公表)https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/dialogue-culture/
パーソル総合研究所「職場で『本音で話せる』関係はいかに実現可能か」(2024年6月20日)https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/column/202406200001.html