就活セクハラ、約3割が経験|ルールがあっても防げない理由とは?

就活セクハラ、約3割が経験|ルールがあっても防げない理由とは?

インターンシップ中のセクハラ経験率は30.1%

企業の採用活動において、インターンシップやOB・OG訪問など、学生と社員が直接交流する機会が増えています。

こうした接点は、学生が企業や仕事への理解を深める貴重な機会である一方、ハラスメントのリスクにも目を向ける必要があります。

厚生労働省が2024年5月に公表した「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、2020~2022年度卒業者を対象に、就活等セクハラの経験を調べています。

その結果、セクハラを一度以上経験した人の割合は、次のとおりでした。

  • インターンシップ中:30.1%(回答者758人)
  • インターンシップ以外の就職活動中:31.9%(回答者737人)

いずれも約3割が経験しているという結果です。

また、2026年9月に厚生労働省が公開した解説では、インターンシップ以外の就職活動中に経験したセクハラの内容として、「食事やデートへの執拗な誘い」が33.2%で最も多く、「性的な冗談やからかい」が28.9%、「性的な事実関係に関する質問」が26.0%と続いています。

こうした行為は、学生の就職活動への意欲や心身の健康にも影響を与えています。

※割合は各調査対象者における経験率であり、現在の就活生全体の割合を示すものではありません。

大手企業でも、すでに禁止ルールがあった

2025年1月、大手電機メーカーのN社で社員が就職活動中の学生に対するわいせつな行為をしたとして逮捕されたことを公表しました。

なお、この事件については、その後、東京地検が元社員を不起訴処分としたことが報じられていますがm不起訴の理由は明らかにされていません。

ここで注目したいのは、同社には事件以前から、採用活動に関するルールが設けられていたという点です。

例えば、個室での面会禁止や、個人のメール・携帯電話・SNSを利用した学生との連絡禁止などです。

それでも問題が発生したことを受け、同社は採用活動指針を見直しました。

新たな対策には、次のような内容が盛り込まれています。

  • 1対1の面会はオープンスペースやオンラインなどに限定し、1時間以内とする
  • 対面での面会は平日9時から18時までとする
  • 飲酒はいかなる場面でも禁止する
  • 面会場所・時間・学生の氏名などを事前に上司と採用担当者に届け出る
  • 採用活動に関わる社員に、ルール遵守の誓約書提出を求める

 

「ルールを知っている」と「ルールが守られる」は違う

ハラスメント防止の規則を整備し、社員に周知することは重要です。

しかし、規則があることと、実際の行動に反映されていることは別の問題です。

例えば、学生から就職相談を受けた社員が、親切心から勤務時間外に個別対応しようとするケースも考えられます。

その際、会社の連絡ルールや面談の基準を十分に理解していなければ、不適切な対応につながるおそれがあります。

また、ルールを理解していても、上司や採用担当者が面談の実施状況を把握できない仕組みでは、逸脱を早期に発見することが難しくなります。

重要なのは、「何を禁止するか」だけでなく、「適切な行動をどう実行・確認するか」まで考えることです。

採用担当者だけでなく、現場の管理職にも求められる役割

インターンシップでは、人事部門だけでなく、各部署の社員が学生の指導を担当することがあります。

そのため、採用活動のルールを人事部門だけで共有していても十分とはいえません。

現場の管理職にも、次のような役割が求められます。

① 指導担当者に役割と行動基準を伝える

学生との適切な距離感や、個別相談・連絡に関する社内ルールを事前に確認する。

② 学生との接点を把握する

面談の日時・場所・方法などを確認し、社員個人に対応を任せきりにしない。

③ 相談や違和感を放置しない

学生からの相談だけでなく、周囲の社員が不適切な言動に気づいた場合にも、適切な窓口へ報告できる体制を整える。

管理職自身が判断に迷わないよう、具体的な事例を用いた研修や対応手順の共有も有効でしょう。

2026年10月の義務化を、対策の実効性を高める機会に

2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が事業主に義務付けられました。

企業には、方針の明確化や周知、相談体制の整備、相談を受けた場合の適切な対応などが求められています。

ただし、制度やルールを整えるだけでは、必ずしも十分とはいえません。

社員一人ひとりが採用する側の立場や影響力を理解し、適切に行動できるようにすること。そして、その行動を組織として支える仕組みをつくることが重要です。

ハラスメント防止対策は、「ルールを作って終わり」ではなく、「ルールが現場で機能しているか」を確認するところまでが大切です。

今回の義務化を、採用活動の管理体制と社員教育の両面から見直す機会にしてはいかがでしょうか。


参考・出典

厚生労働省(2024年5月17日公表)
「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40277.html

厚生労働省(2026年9月公開)
「求職活動等をする方を守るために ― 求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策の新ルール」
https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/series/20260901.html

NEC(2025年1月14日)
「当社社員の逮捕について」採用活動指針の見直し・相談窓口設置
https://jpn.nec.com/press/202501/20250114_02.html

日本人材ニュース(2025年3月4日)
「インターンシップの広がりで高まる『就活セクハラ』のリスク」
https://jinzainews.net/26806393/