「分かった?」と聞くと、なぜ「分かりました」と返ってくる?
現場のひとこと処方箋
「説明したときは『分かりました』と言っていたのに、実際にやらせてみると、全然できていない」
新人や若手社員の育成に携わる方なら、一度はこんな経験があるのではないでしょうか。
「分からなかったら質問してね」と伝えていたのに、質問もなく、仕事が進まない。
上司や先輩からすれば、「分からないなら、どうして聞いてくれなかったの?」と思うかもしれません。
しかし、部下が「分かりました」と答えたからといって、必ずしも仕事を一人で進められる状態になっているとは限りません。
これは多くの職場で起こっていると思います。
そこには、「説明を理解したこと」と「実際にできること」の違いが隠れている可能性があります。
新入社員が求めているのは「丁寧な指導」
日本能率協会が2024年12月に公表した「2024年度 新入社員意識調査」(新入社員向け公開教育セミナー参加者673人)では、理想の上司・先輩として最も多く選ばれたのが「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(25.5%)でした。
また、自分の意欲や能力を高めるために上司や人事へ期待することの第1位は、「成長や力量に対する定期的なフィードバック」(22.0%)でした。いずれも選択肢の上位3つを合算した結果です。
「分かる」と「できる」は、同じではない
例えば、上司が資料作成の手順を一通り説明している時、部下は説明を聞いて納得し、「分かりました」と答えます。
ところが、いざ一人で取りかかると、どの情報を集めればよいのか、何から始めればよいのかが分からなくなる。
「あるある」ですよね。
必ずしも、部下が話を聞いていなかったからとは限りません。
学習には、説明された内容を理解する段階と、その知識を使って実際に行動する段階があります。
説明を聞いて理解できたとしても、初めての仕事を自力で進めるには、経験や練習が必要な場合があります。
また、「分かりました」という返事には、「説明の意味は理解しました」「今のところ質問はありません」「とりあえずやってみます」など、さまざまな意味が含まれている可能性があります。
上司が「分かりました」を「一人でできる」と受け止めてしまうと、ここに認識のずれが生まれます。
「分かった?」より「どう進める?」と聞いてみる
では、どうすれば理解のずれを減らせるのでしょうか。
一つの方法は、説明が終わった後に、部下自身の言葉で仕事の進め方を確認することです。
例えば、「分かった?」と聞く代わりに、「最初に何から始める予定?」「どこまでできたら、一度確認しようか?」と尋ねてみます。
部下が自分の言葉で説明することで、理解できている部分と、まだ曖昧な部分が見えやすくなります。
「ちゃんと聞いていたか確認する」という態度では、かえって萎縮させてしまうこともあるので、「私の説明で分かりにくかったところがないか確認したいから、進め方を一緒に整理しよう」と伝えれば、上司自身も説明の仕方を振り返る機会になります。
OJTは「教えたら終わり」にしない
もう一つ大切なのは、仕事を任せた後のフォローです。
例えば、初めて取り組む仕事であれば、完成してから確認するのではなく、途中の段階で一度進捗を確認する。
必要に応じて手本を見せたり、一緒に作業したりしながら、徐々に本人ができる範囲を広げていく。
最初からすべてを一人でできることを求めるのではなく、習熟度に応じて支援の仕方を変えていくことが重要です。
一方で、いつまでも細かく指示を出し続ければ、部下が自分で考える機会を奪ってしまう可能性もあります。
OJTでは、「どこまで教えるか」と「どこから任せるか」のバランスが求められます。
「伝えた」ではなく「伝わった」を確認する
仕事がうまく進まなかったとき、「ちゃんと説明したのに」「分かったと言ったのに」と、部下の理解力や意欲に原因を求めたくなることもあるでしょう。
しかし、指導する側が説明した内容と、受け取る側が理解した内容が一致しているとは限りません。
もちろん、部下にも、分からないことを質問し、自分の理解を確認する姿勢は必要ですが、それだけに任せるのではなく、上司や先輩が確認しやすい関係や仕組みをつくることも大切です。
「教えたかどうか」ではなく、「相手が実際にできる状態になっているか」。
その視点が、OJTの質を高める一歩になりますよ。



